はりの様より(相互記念/ねぎわだ小説)
はりの様から頂いた素適な小説です。
細く震える呼び声を知る今生はもうそればかりしか愛せぬと
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「…っ!根岸…!」
突然現れた僕を見て、和田くんは涙で潤む瞳を目一杯見開かせた。
信じられないというような声色で僕の名前を呼ぶ。"呼んだ"というより"叫んだ"という表現の方が正しいのかもしれない。
僕の部屋のベッドの上で、体を抱え込むようにしてうずくまっていた和田くん。
彼が右手に握り締めているもの。…僕がたったひとつだけ残しておいた、和田くん宛ての置き手紙。
和田くんの目元は赤く腫れていた。
もしかしたら僕を想って一晩中泣き明かしてくれていたのかもしれない…なんて、他者からすれば自惚れ以外何でもないようなことを冷静に考える。
ボロボロになった靴を玄関で脱いで、所々穴があいた靴下で、僕の部屋の床の感触を確かめた。
うん、やっぱり違うな。ささくれ立った木で足を怪我しないで済むのは有り難い。
そのままベッドにうずくまる和田くんへと近付く。
和田くんは小さく震えて、手を伸ばす僕を振り切るかのようにベッドから這い出した。
和田くんが逃げ切るより早く、僕は彼の腕を強く掴み、自分の方へ引き寄せた。
和田くんの体を腕の中に閉じ込める。
すう…と深呼吸をして、和田くんの匂いを鼻に吸い込んだ。
栗色の髪から漂うシャンプーの良い香り。腕の中に感じるぬくもり。
それは確かに和田くん自身なのだ。
はあ…と、安堵にも似た溜め息を出す。
こうしてもう一度彼の体を抱き締めることが出来た幸せを感じる反面、置き手紙一つだけ残して彼を独りにさせてしまったという後悔の念が僕の中に渦巻く。
持って行ったのは少しのお金と食べ物と、僕の名前が彫り込まれたドッグ・タグ。
和田くんが僕の誕生日に贈ってくれた、僕の一生の宝物。
携帯は持って行かなかった。直前に彼の声を聞いてしまったら、死ぬことに対して臆してしまう気がしたから。
すると、それまで大人しかった和田くんが急に暴れ出し、僕の腕の中から逃れようともがき始めた。
僕は暴れる彼の体を必死で抱き締める。だがなかなか和田くんは暴れることをやめない。
和田くんは僕の胸を拳で何度も叩き、僕の服をぐしゃぐしゃになるまで握り締めた後、たぐるように僕の体に抱きついてきた。
和田くんの泣き声が部屋中に響き渡る。
「根岸、の、ばかやろう…っ!」
「ごめん」
「お、俺がどれだけ心配したと、思っ…」
「ごめん」
「うっ…うっ…根岸…うあ…ああぁ…!」
「…ごめんね…」
止まない嗚咽、ぎゅっと抱きついてくる彼の体。
彼の首にかけられていたのは、彼自身の名前が刻まれたドッグ・タグ。僕が、彼の誕生日に贈ったもの。
…もう離さないと心の中で呟いて、彼の体を強く…強く抱き締めた。
一歩踏み出せば死の世界へ赴くことができる、その一瞬。
きみの、きみの姿を思い浮かべたんだ。
崖から踏み出しかけた足を引っ込めて。
色々な怪我を負いながらがむしゃらに森を走り抜けて。
ボロボロの体で帰ってきた僕を、涙を流しながら迎えてくれた、きみ。
その姿を見た時、死ななくてよかったと、生きていてよかったと、心からそう思ったんだ。
必然じゃなく奇跡じゃなくまして運命でもなくて
(もっとずっと素晴らしい何かであると、ぼくは考える)
*はりの様より相互記念に頂いたねぎわだ小説です…!
ハァハァハァハァ…!!!!
こ、こんな素適な小説、私なんかが貰ってしまっていいのかと悶えまくってしまいました…!
置手紙を和田君にしかしてないとか、泣く和田君とか…!
切なくて萌える小説をありがとうございます…!
はりの様の世界観とか文章が大好きなので、ホント嬉しかったです!
ホントにホントに感謝ですっ